2008年 06月 13日
先週末にラワルピンディに遊びに行ってから、特に取り立てて書くことのない日常を送っていたが、アフガニスタン/パキスタンにまつわる話題がメディアで取上げられているので、少しだけupdateしておこう。 1. Paris conference 今日6月12日に、パリでアフガニスタン復興支援会合が開かれた。これで、アフガニスタンの復興の国際会議は、2002年1月の東京会合、2004年3月のベルリン会合、2006年1月のロンドン会合に続いて4回目になる。カルザイ大統領は、国際社会から500億ドルのプレッジを求めてアピールをしたようだが、アルジャジーラの報道では、150億ドルくらいになるのではないかと予想されている。アメリカは100億ドル、フランスは援助を2倍にすると約束したようだ。冷戦が終わり、しばらくの間見捨てられたアフガニスタンだが、こうして80カ国以上のドナー国を集める国際会議が開かれているところを見ると、依然としてアフガニスタンは国際社会の関心の中心にあるということだろうか。 しかし、多額の援助を受け取るアフガニスタンには沢山の問題がある。一つは援助の効率性の問題で、OxfamとACBARが発表したペーパーによれば、国際社会によってプレッジされた金額の40%が、ドナー国に還流しているという。結局、ドナー国の国際スタッフの給料やその他アドミンコストにばかりお金が使われて、アフガニスタンの末端にまでお金が届かないということだろうか。エコノミックヒットマンを思い出した。それに、アフガニスタンの援助に依存した財務体質も問題だ。BBCの報道では、2006-2007に国際社会から援助された金額は、アフガニスタンの国家収入の7倍だったらしい。腐敗の問題もあるが、これからどうやってnationalizationしていくかということが問題となるだろう(・・・ということは、僕がアフガニスタンに赴任した時から言われているが)。 ノルウェーやデンマークは、ISAF軍に自国の兵士を派遣しているが、自国民兵士の負傷者数が増加していることから「一体、僕達は何の為に戦っているの?」という声が強まり、政策を疑問視する声が強まっているという。何の為に、兵士を派遣するのか。何の為に、支援をするのか。日本を含めたドナー各国は、現実主義的なパースペクティブから人道主義的なパースペクティブから、考え直してみてもいいかもしれない。 2. Judge restoration 昨年秋に、ムシャラフ大統領によって罷免された最高裁長官らを含む裁判官が、パキスタンで大規模なパレードを行っている。ラホールからイスラマバードにデモ隊が行進をしているらしく、明日13日にはイスラマバードの大統領官邸付近に到着するのではないかと報道されている。警備を増強したり、トラックのコンテナで道を封鎖したり、緊張が高まっている。裁判官の復帰を先導しているのは、ナワズ・シャリフPML-N党首(元大統領)だ。1999年にmilitary coupで政権をムシャラフ大統領に奪われたからかどうかはしらないが、彼は、前からずっとこの問題を重視している。この問題の影響もあってか、先月、PML-Nは政権から離脱すること宣言して、PPPと決別した。この問題は、今後どう発展していくのだろうか。 3. US air strike in tribal area 昨日、アフガニスタン/パキスタンの国境付近で、アメリカが空爆を行い、11人のパキスタン兵士が死亡したと、BBCが報じている。アメリカは、タリバンが先に攻撃を仕掛けていたので、仕方のない正当防衛だったと発表しているが、パキスタン側は「アメリカがパキスタン領土に入った」ことを非難し、国家主権(sovereignity)を侵害したとアメリカを非難している。これを受けてアメリカは、珍しくビデオ映像を公表して、正当防衛であったことを主張している。 カブールのスタッフの一人がパクティア県出身で、彼が「パクティアの少し先にはパラチナル(パキスタンの都市)がある」と言っていた事を思い出した。そこに住むパシュトゥン人にとっては、アフガニスタン/パキスタンの国境なんて目に見えなくて、同じ仲間が住んでいる地域というくらいにしか考えてないのだろう。しかし、現実として国境が引かれているのだから、アメリカがパキスタン領土を侵したとしたら、パキスタンはこれを大きな問題として見るだろう。 そもそも、この問題が大きくなっているのは、パキスタンがアメリカとアフガニスタンとよく調整しないまま、タリバンと平和合意の話しを進めてしまったことにあるように思う。アフガニスタンとそれを支援するアメリカにしてみれば、タリバンがパキスタンと平和合意を結び、攻撃をしないと約束したことは、即ち、アフガニスタンの脅威が増した事を意味するのであり、その辺の関係でアメリカ/アフガニスタンとパキスタンの間で上手くいっていないのではないだろうか。元々上手くいっていなかったが、それが顕著に表面化してしまったということかもしれない。パキスタンの視点に立てば、2008年2月以降、連立政権も上手くいかないし、治安も良くならないし、内憂を抱えていたので、少しでも治安を改善しようとか国民の信頼を取り戻そうとかいう思惑があって、話を急ぎすぎたのかもしれない。それは、パキスタンの立場に立てばよくわかる話ではある。しかし、アフガニスタンにしてみれば、もうちょっと僕達も巻き込んで話しをしてくれてもいいじゃないか、という気持ちかもしれない。 アフガニスタン/パキスタン/アメリカ、もちろん、それ以外にも背後でうごめく国や集団の利害が、アフガニスタン/パキスタンを舞台として錯綜している。面白いなんて言ったら怒られるかもしれないけど、面白い。
by aokikenta
| 2008-06-13 00:23
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