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2008年 12月 26日
確かなもの
今、日本は金融危機の真っ最中にあるみたいだ。日経平均株価は8000円台まで下がっているし、銀行は貸し渋り、工場は経営の悪化から閉鎖され、従業員の解雇が相次いでいる。不安定な時代なのだと思う。社会不安が国民の上にのしかかっているのだと思う。

こうした時代に国民から求められるものは、何かしらの「確かなもの」だと思う。何か安心感や心の拠り所を与えてくれる確かなもの。それは、安定した生活かもしれない。揺るぎない確信を与えてくれる精神的な何かなのかもしれない。でも、このまま金融危機が続くのであれば、そういうものを求める人は2009年には間違いなく増加するだろう。

例えば、国家主義のような兆候は、増加する傾向にあるだろう。愛国主義的な発言をする政治家や評論家がもてはやされるようになるだろうし、それをもてはやす新聞があるだろう。国家公務員に就職をする若者も増えるようになるかもしれない。内定取り消しというニュースが騒がれていたが、企業に就職しても終身雇用を保障してくれるとは限らない時代になった。派遣社員は解雇され、外国人労働者の首はどんどん切られている。そうなると親方日の丸が安心だから就職人気が高まるようになるのではないだろうか。

他にも、新興宗教や自己啓発セミナーのブームがやってくるかもしれない。不安定な生活の中でも確かだと感じられるもの。こうした状況下で、人類は歴史の中で宗教を求めてきたが、それはいつの時代も変わらないだろうと思う。圧倒的なカリスマ性。それさせあれば、言っていることや主張が正しくなくても、かまわないのだと思う。だって、多くの人はそんな難しいことを考えずに、ただ安心感や救いを得たいだけなのだから。

本当は、確かなものを与えられる役割を担うべきなのは政治家なのだと思う。しかし、今の日本ではそこまでの求心力を持っている人がいない。そして、国民の多くも事態をそこまで深刻に考えていない。なんとなく、テレビ番組に出ている有名タレントの言っていることを、思考停止状態で聞いている。仲間内で同じような言葉使いをすることで、一種の連帯感を得ようとする。

バナナダイエットが流行っているという報道でバナナが市場から消えてしまう国で、バラエティ番組やテレビドラマ以外に共同幻想や物語を体感できない国で、社会不安が全体を覆っている。本来的には、社会学とか心理学とかおよそ社会科学系の学問というものは、こういう時代にこそ活躍するべきなのだと思う。情勢を分析した上で何らかの未来予測を提示すべきなのだと思う。しかし、あまり役に立っているとは思えない。それは悲しいことだ。

未来がどうなっていくかは誰にもわからないけれど、「蒼天既に死す」と漢の没落を憂いて現れた黄布族とそれに続く三国時代のように、あるいは明治維新期に多くの才能ある若者が現れたみたいに、時代を憂いてそれぞれの手段で立ち上がる人が増えれば、緩やかに時代は変わっていくだろうと思う。そして、新しく多様な生き方というものが生まれてくるに違いない。その中の一つの選択肢として、開発援助とか社会貢献の仕事というものがあったなら、それはそれで面白いと思う。多様な生き方や考え方の人がいれば、それだけ社会は柔軟になっていくはずだろう。世界は多様性で構成されているのだから、長い目で見たらそれが正しい帰結のはずだ。

by aokikenta | 2008-12-26 07:18 | 日記(東京2)


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