2008年 06月 16日
構造主義栄養学・・・
土曜日は、昼まで寝ていた。前日歩き疲れたこともあったし、何より起きなければいけない用事というものがなかったので、とにかく寝たいだけ寝ることにしたのだ。寝たいだけ寝られるというのは、多くの状況において幸せなことである。起きてからメールをチェックしてから、近くの食堂に行って、ナンとダールを食べて、マンゴージュースを締めに飲んだ。パキスタンのフルコースメニュー。パキスタンでしか容易に味わえないことを考えると、これもなかなか幸せな組み合わせである。

最近、パキスタンの食事をしながら、「構造主義栄養学」という学問は出来ないものかと考えたりする。よく日本人や欧米人と話していると、パキスタンの料理に対する不満を耳にする。油が多い、どれも味が煮ている、なんであんなものを食べているのか理解できない、etc。確かに毎日食べていると飽きるのは事実である。しかし、それはどの国の料理を食べていても同じことではないだろうか。また、パキスタンの朝食の定番パラサ(小麦粉をこねた物を油で焼く料理)を食して、なんでこんなに油を使うんだろう、きっとパキスタン人は味がわからないに違いない、というようなことを聞く事もある。しかし、果たしてそれは事実なのだろうか?

スイス出身のソシュールという言語学者がいる。彼は、構造主義に大きな影響を与えた人だが、彼の大きな業績は「シーニュ(記号)=シニフィアン(記号を形作る音のイメージ)+シニフィエ(記号の意味内容)」という公式を打ち出したことにある。言葉には二つの側面がある。一つは、それが「mizu」という音によって出来ている側面。もう一つは、水が表す意味という側面。彼は、前者をシニフィアン、後者をシニフィエと呼んだ。また、彼は言語というのは他の物との対立でしか表せないという事も発見した。例えば、「あ」という音がどういう音か、説明することは出来ない。それは「い」でも「う」でも「え」でも「お」でもなく、その他のどの音でもないという差異でしか説明できないのである。彼の理論を引き継いで、プラーグ学派という人達は音韻論という学問を発達させた。音というのは、「音素」に分類させることができるとして、音韻論は大きく発展した。

この「音素」を「栄養素」に変換してみたら、どうなるだろう?パキスタンの朝ごはん、例えば、パラサとダール・チャンナを想定したとする。パラサは大きく分けて、炭水化物と脂質という栄養素に分解することができるだろう。また、ダール・チャンナは蛋白質とビタミン類に分類できるに違いない。もう一方で、イギリスの典型的な食事、トーストとビーンズとソーセージはどうだろう?トーストは炭水化物、ビーンズは蛋白質とビタミン類、ソーセージは蛋白質と脂質に分解できるだろう。日本の食事、白米と鮭の塩焼きと漬物はどうだろう?白米は炭水化物、鮭は蛋白質、漬物は食物繊維とビタミン類に分類できるだろう。

ひょっとして、これは直感だが、世界の食事というのはこういう風に栄養素で分解したら、ほとんど三大栄養素の炭水化物、蛋白質、脂質に分解できるのではないだろうか。そしてまた、一食の総カロリーを計算したら、大抵同じカロリー値が導き出されるのではないだろうか。おそらく、ちゃんと比較をしてみたら多少のズレはあるだろう。しかし、そのズレは、カロリー値が多すぎる場合は寒冷地あるいは熱帯という特殊な環境の為に、他の地域よりもカロリーを多く必要とするという理由があるからと説明できる。少ない地域の場合、朝食での比較では少ないが、一日の総量としてみれば、昼食と夕食のカロリー値が多くて、補完し合っているのかもしれない。

僕がなんでこんなことを書くかというと、もし構造主義栄養学なるものが出来るとすれば、パキスタンは「未開」社会だからパキスタン人はこんなものを食べているのだ、とか、アフリカは未開社会だから油のどっぷり入ったものばかり食べているんだ、というような偏見や固定観念を覆すことができるのではないだろうか、と思うからだ。自民族優位主義というのはどこの社会にもあると思うが、よく見てみると、劣っていると思われる社会にもその制度を維持する為の理由があるのではないだろうか。もし、比較方法論によって、異なる社会の食事における共通の栄養構造が抽出できれば、新たな視点が得られるのではないかと思う。

しっかり調べもしないで書いているので、僕は間違えているかもしれないけど、「郷に入れば郷に従え」という諺があるように、「全く理解できない」事柄の中にも必ず何らかの意味が横たわっているのではないだろうかという確信はある。

土曜の午後は、サッカー部の練習に参加して、そのまま中華料理屋で開かれた新入部員歓迎会に参加してきた。日曜の今日はずっと仕事をしていた。夜に食べたチキン・ニハリが美味しかった。

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↑チキン・ニハリ。辛くておいしい。左にあるのはチャパティー。奥にある生姜とパクチーとレモンと青唐辛子で、味を調節できる。
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by aokikenta | 2008-06-16 00:58 | 日記(イスラマバード)


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