2008年 02月 17日
タキシラ遺跡、イラン戦、カブール出張、ソルト・レンジ等
アフガニスタンからパキスタンに退避してきて1ヶ月以上が過ぎた。ゴンドラチェフの波循環理論みたいに、モチベーションが上へ下へと曲線を描いた不安定な1ヶ月だった。何を書いたらいいだろうか、というか僕は今何を書きたいのだろうか。頭がぼんやりしていて、イマイチよくわからない。とりあえず、最近の状況。こんなことが過去1週間であった。

2月8日 タキシラ遺跡訪問とイラン戦
タキシラという名前のガンダーラ文明最大の都市遺跡が、イスラマバードから西北西32キロの所にある。東京から出張者が来ていたので、パキスタンのいい所を見てもらおうという意味もあって車を一台借り上げて行って来た。タキシラ博物館には、仏像や仏頭やストゥーパ(仏塔)等が置かれていたが、興味深かったのは、西洋人あるいはペルシア人の顔をした人物の彫刻が、仏像の横に置かれている美術品が数多くあったことだ。東西文明の融合という言葉自体はよく聞くけど、ギリシャ人風の彫りの深い顔立ちの彫刻が仏像の横にある光景を自分の目で見たのは初めてだったので驚いた(ガンダーラ文明はアフガニスタン東部がむしろ中心地だったのでカブール博物館にも本来あるはずだが、僕が行った時は展示品が破壊されたり盗まれたりで全然無くなっていたので見られなかった)。

アウフヘーベン(止揚)というのは、定立(テーゼ)と反定立(アンチテーゼ)がぶつかった時に、停滞ではなく上昇が生まれる、というヘーゲル弁証法上の概念だった気がする。そうだとすると、ガンダーラ美術というのはアウフヘーベンが実際に起こったことによる成果物と言えるかもしれない。しかし、物事というのは矛盾したものがぶつかることで常に上昇すると言えるのだろうか?全く別の考えの人や文化や思想がぶつかった時に、多くの場合はガンダーラ美術のように上昇するわけではなく、停滞、あるいは破壊の方向に向かうのではないだろうか。ヘレニズム文化・仏教・イスラム教・イギリス・ロシア・アメリカなどがひっきりなしに到来しては去っていったアフガニスタンが、戦争ばかりやっているのなんてとてもいい例じゃないか(いい例というのは、例としていいというだけで、決して価値観としていいということではない)。そうだとしたら、相反する人や思想や文化がぶつかった時に、停滞ではなく上昇へと向かわせる決定的な要素というのは何なのだろうか。答えがあるのか、ないのか、そもそも、そんなことを考える必要があるのかどうかすらよくわからないが、タキシラの遺跡というのは、そんなことを考えずにはいられない遺跡なのであった。

その後、ラワルピンディで少しお買い物をして、夜はイラン大使館で行われたサッカーの練習試合に行って来た。BHC戦ではボロ負けしたので気合は入っていたが、この日、イランチームの集まりがすこぶる悪くて人数に満たないので、日本人チームから人を何人かイランチームに補充してなんとか試合をすることが出来た。それでも、日本チームはイランチームに勝利できたのでホッとした。試合の後、7th Avenueにある中華料理屋で祝勝会をした。持込んだビールがとても美味しく感じた。

2月10日~13日 久しぶりのカブール入り
去年、外部監査と新規プロジェクト準備と地雷原返還式準備で1ヶ月程滞在したカブール出張以来、約2ヶ月ぶりにカブールに出張で行って来た。久しぶりのカブールはまだ雪が残っていて、水道管が案の上凍っていたので、ニット帽を被って毎日同じような格好で過ごした。それでも、スタッフは「これでも先週より暖かくなった」と言っていたので、そのセリフで先週の寒さが推測されて逆に怖くなった。

仕事の方はほぼ計画していた通りに達成されたのでよかったが、個人的には、現地スタッフと久しぶりに顔を合わせられたのが一番よかった。みんな与えられた環境で一生懸命やっていて、僕も遠隔操作になってから不安を抱えていたけれど、多分、本当は彼らの方が不安でいっぱいだったのだろうと思った。突然上司が全員いなくなると聞いたら誰だって不安になるものだろう。3泊4日という短い滞在なのでフィジカルにできることは限られていたが、出来ることはやろうと思って、時間を取ってスタッフ一人一人全員と面談をした。要望でもコメントでも何でも話して欲しいと言ったら、色々と相談事とか悩み事とかが出てきた。今すぐに解決できるものばかりではないけど、とりあえず上司が話を聞いて汲み取ってくれるというのはとても励みになると期待している。

はっきり言って仕事というのは自分がやってしまえば一番楽である。大抵のことはコントロールできるし、自分なら何をどのくらいできるのかということがわかる。しかし、今の僕の状況ではそれが出来ない。もう物理的に不可能なのである。当初、そのことに戸惑って、どんなシステムを構築していったらいいのか(アドミン、ファイナンス、ロジスティクス、HR管理等全ての面で)悩んだのだが、今は逆に、この状況をチャンスだと思って、如何に人を上手く使うのか、という事の勉強だと思うようにしたいと思っている。そんな貴重な勉強が28歳でさせてもらえるんだから儲けもんじゃないか。日本で働いてたら40歳くらいにならないとさせてもらえない仕事に違いない。そう思えたら少しは前向きになれるような気がした。きっと今僕がすべきことは、そういうことなんだ。

2月16日 岩塩鉱山ソルト・レンジ訪問
パキスタンの「ピンクの塩」は有名なんだよ、とカブールにいた時に元パキスタンの協力隊員の方から聞いていたのでずっと塩の鉱山へ行きたいと思っていたのだが、それが昨日ようやく実現できた。イスラマバードからM-2道路をラホール方面へ南下して160キロほど行った場所にあるケウラという街に世界で2番目に大きな岩塩鉱山があるので、そこへ同僚や友達と行ってきたのだ。鉱山の中へはトロッコで入っていき、鍾乳洞みたいな内部を歩きながら、岩塩鉱山の見学をした。淡い桜色をした岩塩はライトアップするととても綺麗で素敵だった。

イスラマバード近郊の観光スポットと言えば、タキシラ遺跡とラワルピンディとソルト・レンジとロータス・フォートが有名だとガイドブックに書いてあったので、あとは残されたロータス・フォートにも時間がある時に行ってみよう。同時に、ラホールとかペシャワール等の大都市にも行く計画を立ててみたいと思う。

そういえば、読みたいと思った本を買って徐々に読んでいる。まだ余り読めていない。

Emma Duncan, “Breaking the Curfew”
Steve Coll, “Ghost Wars: The Secret History of the CIA, Afghanistan, Bin Laden, from the Soviet Invasion to September 10, 2001”
Mohsin Hamid, “Moth Smoke”
John Perkins, “The Secreat History of the American Empire: Economic Hit Men, Jackals, and the Truth about Global Corruption”

DVDの方も適当に買った。こちらは全て観た。

“Beyond Borders”
“Black Hawk Down”
“Blood Diamond”
“Charlie Wilson’s War”

Steve Collの”Ghost Wars”の第一章が、1979年の在パキスタン・アメリカ大使館が暴動で襲撃されて死傷者が多数出た事件の様子を克明に書いていて、それがなんとなく今の選挙の不安定な状況と頭の中で重なるところがあって臨場感を持って読めた。実際にパキスタンに住んでみると、パキスタンのことが前よりも身近に感じられる。両国の歴史的関係を考えると、パキスタンの事がわかればアフガニスタンの事もより深くわかるはずので、面白いことに隣国にいながらにしてアフガニスタンについて重層的な理解ができるようになるかもしれない。思わぬ波及効果。ちょっとだけ、野球が上手くなりたいが為に真剣で素振りをしていたら、一本足打法を編み出してしまった王貞治の気分だ(そんなエピソードなかったっけ?)。

今週、来週は少しゆっくりしよう。

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by aokikenta | 2008-02-17 19:56 | 日記(イスラマバード)


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