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2007年 12月 02日
退避勧告下のアフガニスタン・リポート⑥ 治安情勢編(カブール・中央地区を中心に)
「退避勧告下のアフガニスタン・リポート 日常編」で、アフガニスタンは平和でいい所だというイメージばかりを与えてしまったかもしれないので、バランスを取る意味で、最近の治安情勢編(カブール・中央地区を中心に)を書いてみたいと思う。

自爆テロ
記憶に新しい所では、つい先日11月27日の午前7時40分頃にワズィル・アクバル・カーンで発生した自爆テロ、もう少し詳しく言えばVBIED(Vehicle Borne Improvised Explosive Device:車両運搬式即席爆発装置)だろう。この攻撃はISAFコンボイを狙ったもので、ANSOによれば、2名のアメリカ兵が死亡し、4名の負傷者が出た。事件発生現場近くの友人に聞いたところでは、その日は余りにもものすごい爆発音で目を覚ましたということだった。現場近くのオフィスでは窓ガラスが飛散するなどの被害もあったらしい。Yoichiroさんのブログでもっと詳しいことが見られる。

もう1件、カブールでは自爆テロ、BBIED(Body Borne IED:身体運搬式即席爆発装置)が、11月24日の午前10時頃にパグマン地区で発生した。これによりISAFイタリア軍の兵士1名と6名の市民が死亡、4名の兵士が負傷したとANSOは報じている。

自爆テロが発生する時間帯というのは朝の通勤時間に集中しているという興味深い事実がある。発生する箇所もジャララバード・ロード近く、空港付近、ダルラマン・ロード付近、内務省前の通りなど、比較的同じ場所に集中しているので、時間帯と場所に注意を払うと、リスクは相当減らせるはずだ。これらを守らないと、なんでそんな時間にそんな場所にいたの?ということになる。この辺りの情報は住んでみないと入りづらいし、土地勘がないと簡単に覚えられない。

誘拐
外国人の誘拐は欧米や日本でも報道されるが、アフガン人の誘拐はBBC、CNN、あるいは、日本のメディアでも滅多に報道されないという悲しい現実がある。命の重みは平等かもしれない。しかし、奪われる命によって社会に与える「インパクト」は確実に違うのだ。極端に言えば、アフガン人が誘拐されても、解放されても、あるいは残念な結末に至ったとしても、日本の新聞の売れ行きには影響しないのだ。非常に悲しくてやるせないが、それが高度資本主義経済の現実だ。

11月26日にも国際NGOで働く2名のナショナルスタッフが、フィールド調査中にワルダック州で誘拐されるという事件があった。政治目的なのか身代金目的なのかは定かではないが、解放に向けて地域の部族長を通じた交渉が行われているという。

日本でこういうニュースを知る人は何人くらいいるだろうか。

IED攻撃
ムサイ地区の知事を狙ったRCIED(Remote-Controlled IED:遠隔操作式即席爆発装置)事件も、11月26日の午前9時20分頃に発生している。しかし、この攻撃は、ターゲットをはずし、全然ターゲットとは違う似たような車が被害に合い、乗っていた市民4名が死亡したと報じられている。このIEDは地雷から製造されていたらしいが、専門家に言わせるとIEDを製造するのは、爆薬や砲弾の知識があれば意外と簡単に出来るらしい。

まとめらしきもの
ANSOでは、これらを総合して次のような注意を促している。

(中央地区)
・カブール市内での自爆テロ
・身代金を目的とした誘拐
・カブール州とバーミヤン州でのNGOを対象とした犯罪行為
・カブール・ワルダック・ロガー・カピサ州におけるロケット攻撃

(カブール市内)
・自爆テロ
・身代金目的による国際NGOスタッフの誘拐
・カブール市内におけるIED攻撃の増加

というわけで、首都カブールにおいては、自爆テロ・誘拐・IED攻撃・ロケット攻撃などの脅威が高い。とりわけ、外国人にとっては身代金もしくは政治目的の誘拐の危険が高い。アフガニスタン人でも国際NGOや国際機関で働いている人々は同様の脅威に晒されている。一方で、多くのアフガニスタン人は変わらず普通の生活を送っているが、自爆テロやIEDによる市民の被害は後を絶たない。

こう考えると、反タリバンの人が増えても良さそうなものだが、事情はそんなに簡単ではなく、むしろ、軍事オペレーション中の誤爆や、カンダハル・ヘルマンド州を中心とした緊張の高い地域でのIMFによる市民への誤射などにより親タリバンが増えているということを良く聞く。緊張の高い南部では、警告を発したにも関わらず軍用車両に近づく人や車は、自爆テロ犯である可能性が高いということで、射撃を受けることがあるようだ。この背景には、アフガニスタンで従軍している兵士の質の低さや士気の低下などがあるということを何かの記事で読んだ。

あんまりまとめようがないけど、まとめらしきものがあるとすれば、アフガニスタンは観光気分で来ていい場所では決してないということ。個人的には、色んな人にアフガニスタンを訪れて欲しいけど、残念ながら、まだアフガニスタンはそういう時代にはなっていない。仕事でやむをえず来る際にも事前に十分に情報を収集して、関係機関とよく調整をして、組織的に安全対策が取れる体制を講じた上で来ることを力強くお勧めしたい。

尚、これらの情報は主に「ANSO Weekly Security Report: Report No. 48-07」に拠った。

最後に、文中に出てきた略語とよく治安関連のリポートで見る略語を適当に書いて終わりにしよう。非常に短いリストだな・・・。あと、こういうものを読んで興奮する人は(ポスト)紛争国で働くか、警備関係の会社で働くか、フランス外人部隊へ行くべきだ(笑)。

IED: Improvised Explosive Device
BBIED: Body Borne Improvised Explosive Device
VBIED: Vehicle Borne Improvised Explosive Device
RCIED: Remote-Controlled Improvised Explosive Device
ANA: Afghan National Army
ANP: Afghan National Police
IMF: International Military Force
AOG: Armed Opposition Groups
ANSO: Afghanistan NGO Safety Office
ANSF: Afghanistan National Security Force
ISAF: International Security Assistance Force
(思いついた順)

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→Central Region

by aokikenta | 2007-12-02 18:24 | 日記(イスラマバード)


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