2007年 10月 24日
喪失感
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ねぇ、あの丘の形を覚えてる?
砂漠を歩くラクダのこぶみたいでさぁ、2つ大きなでっぱりがあって、
それぞれのでっぱりの上にテレビのアンテナやら無線のリピーターやら
いっぱいマストが立っててさぁ、その丘の斜面には土で作った
茶色い家がいっぱい不規則に並んでるんだ。

夜に車で移動してるとオレンジ色の電球の明かりが点々とついててさ、
あの中ではそれぞれの暮らしがあるんだなぁ、
綺麗だなぁなんていつも思ってたんだ。
なんかたまに目を瞑(つむ)ると思い出すよね、あの丘のこと。
君は思い出さない?


昔、神田川の「あなたの優しさが怖かった」っていう
歌詞の意味がわからなかったんだ。
優しさってどこまでもいいはずのもので、怖がるものじゃないはずだ、なんて。
でも、いつから僕はその意味がわかるようになったんだろう?


これから先、アフガニスタンのような国に出会うことは、
僕の人生でもう一度あるだろうか。

戦争で破壊され尽くした国。
そして、国際社会からの援助で生き返ろうとしている国。

援助の世界で働く僕にとって、
アフガニスタンはLast Resortなのかもしれない。


手の平から零(こぼ)れ落ちていく。
まるで砂が指の間からこぼれていくように。

手の平をすり抜けていく。
これまで手の平いっぱいにあったものなのに。

人々の笑顔も、峻険な山々も、
どこまでも続く土漠も、抜けるような青空も、
手の平の上にいっぱいあったのに、
みんなすり抜けていく。


あなたの優しさが怖かった。
ただ、失われていってしまう、
こぼれていってしまう、
すり抜けていってしまうのが、
怖いだけ。
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by aokikenta | 2007-10-24 15:58 | 日記(カブール)


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