2007年 10月 03日
現場雑感行きます!
ひょっとしたら、霞ヶ関とカブールの間には、僕らが住む地球と宇宙の果てにある名前もない星との間にある何億光年分くらいのディスタンスがあるのかもしれない。

100人近いスタッフの生活を保障しなければならない立場にあり、キッチンもシャワーもセッティングされていない事務所で、沸かした鍋一杯のお湯で週に一回くらいだけ体を洗っている「時代錯誤的一人緊急支援フェーズ」状態の現場の末端にいる自分と、世界第二位の経済大国の首都で働いている人たちの間に横たわるディッチは果たして埋められ得(う)ることがあるのであろうか?開発とか平和構築とか人道支援とか、そんな高尚な言葉以前の素朴な一つの疑問である。

世の中には色んなレベルがある。例えば、国際物流の世界では、荷物の輸送をお願いする荷主がいて、その貨物を受け取って現場に指示を流す営業がいて、営業の指示を受け取って通関をする通関士がいて、貨物を梱包したり保管したりする倉庫があって、貨物の引渡しをアレンジする受け渡しの人がいて、貨物を輸送するドライバーがいて、それを配車する配車係がいて、その貨物を受け取って実際に海外に運ぶ会社がいて、それで一つの円滑な作業が可能になるのだ。

僕が物流の世界にいて感じたことの一つは、それぞれの立場によって考え方が違うのはしょうがないが、指示を出す側にいる人は現場のことを思いやって、トラブルが起こらないように十分な時間をもって丁寧な書類を作り指示を出すのが重要だということだ。それが入社して営業に入ったばかりの人にはなかなかわからない。実際に、品川駅や成田空港からバスに揺られて交通の不便な埠頭や空港に行き、お昼になるとどこもお弁当がすぐに売切れてしまい、税関に行ったら書類の不備だといって突き返されて泣きそうになり、倉庫や輸送のおっちゃんが営業の文句を愚痴愚痴言っているのを延々聞かされるような環境にしばらく置かれて、はじめて体で理解できるのであった。

それがこの業界にも適用できるのであれば、ドナーもプロポーザル審査機関も援助調整機関もみんなそろって現場で一定の期間、働いてみてはどうだろうか?ドネーションの変化によってはスタッフを解雇したり、日々、人材・資金・在庫・情報・危機などの管理を行い、契約が切れれば値上げを確実にほのめかす大家さんと交渉を行いながら、ドナーやUNや提携団体や他のNGOや被支援国政府と折衝すれば、全てがセットアップされたオフィスで快適に仕事をするのとは異なる視点が得られるのではないかと思う。異なるセクターで研修を行う人材交流制度とかいうアイデアは長期的に見てどうだろうか?

現場雑感。

ちなみに、「現場雑感行きます!」というのは、横山秀夫の「クライマーズ・ハイ」という小説の中のフレーズで、御巣鷹山の飛行機墜落現場に行って惨状を目にした新聞記者が、原稿締め切りに間に合わせる為に、体をぼろぼろにしながら山を下って最寄の電話ボックスに駆け込んで叫びながら言うセリフである。

「現場雑感行きます!」

僕は結構好き。

その現場雑感がいい文章で感動的なのだが、しかし、新聞社本部の意向で、本来一面に乗るはずだったこの現場雑感は掲載されないのであった。

現場の悲哀。

貿易も新聞も開発援助も、どこの世界も同じ構造なのか。
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by aokikenta | 2007-10-03 00:18 | 日記(カブール)


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