2007年 07月 23日
たまにオフィシャル・ホームページの方でも文章を書いてるので、気が向いたらどうぞ。 → こちらの「アフガン報告」から見られます * * * * * 「地雷処理と祈り」 現地スタッフの一人が昼下がりにお祈りを始めた。彼のお祈りを観察していると、座り方が正座だった。いつも目にしている光景だが、一瞬違和感を持った。 通常、アフガニスタン人は胡坐(あぐら)をかいて生活をしている。食事をする時、チャイを飲んで歓談する時、重要な会議をする時、アフガニスタンの伝統では絨毯の上で胡坐をかくのが慣わしだ。もともと、胡坐の「胡(こ)」の字は、唐代の中国では「中国の西方もしくは北方からきたもの」に対して付けられた。胡瓜、胡椒等と同様、胡坐も中国の西方、即ち、ペルシャ、アフガニスタン、インド方面からもたらされた。アフガニスタンは胡坐という呼称の起源とでも言えるかもしれない。 しかし、アフガニスタン人はお祈りの際には決まって正座をするのである。イスラム教徒であるアフガニスタン人は一日に5回欠かさず唯一神アッラーへのお祈りを捧げる。夏の期間であれば、朝の午前4時半、午後1時15分、午後5時15分、午後7時10分、午後8時30分の5回だ。これらに加えて、毎週金曜日にはモスクにおける集団礼拝によって神への信仰心を誓うのである。正座をしているアフガニスタン人を見ながら、神と対峙する厳粛な瞬間、人間は自然と正座になってしまうのかもしれないとふと思った。 地雷処理は祈りに似ている。お祈りと同じく、地雷処理員は作業をする際に正座をする。アフガニスタン人が正座をする光景を目にするには、お祈りと地雷処理だけだ。 安全の面から言えば、地雷処理員が正座をするのは、仮に事故があったとしても、肉体への被害を最小限に抑えられる為だ。地雷が爆破した際には、地雷の破片や爆風が人体を傷つける。従って、なるべく多く地雷に面している部分を防護服やバイザーで覆った方が被害を抑えられる。また、地雷処理員自身の前方にある土に対して探知作業、除去作業を行う為、正座が一番作業効率を考えた上で適している。こうしたことから、地雷処理作業は正座で行われるのだ。 しかし、地雷処理員が正座で作業をするのは、果たしてそうした理由のみからなのだろうか。地雷処理とは一歩間違えれば命を落としかねない危険な作業だ。地雷処理員は作業をしながら祈っているのではないか。 地雷で手足を失わないように。今日も無事で作業を終えられますように。無事に家族の下に帰れますように――。 そして、地雷原の周りに住む村人も祈っている。地雷原で事故を起こす子供がもうでませんように――。 それぞれの祈りを抱えながら今日も地雷処理員は地雷原に出て行く。 (アフガン報告第16報) * * * * *
by aokikenta
| 2007-07-23 00:16
| 日記(カブール)
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