2007年 06月 29日
2007年5月29日(火) テヘラン滞在
 11時の飛行機に乗るから1時間前に空港に行けばいいかと思って、9時半にホテルをチェックアウトして、タクシーで空港に向かった。最後の日はまたマシュハドに戻ってくるので、チェックアウトの時に、また戻ってくるから予約しておいてと、受付のお姉さんにいっておいた。

 飛行機は予定より30分遅れて11時30分にマシュハド空港を出発し、13時にはテヘランに到着した。
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↑イラン地図

 大きな荷物を持っていたので、とりあえずテヘラン駅に行って荷物をロッカーに預けてから市内を見て回ろうと思った。なんせ列車の出発時刻は夜の10時20分なのだ。丸々半日ある。空港の係員みたいな人に駅へ行くバス停はどこかと聞いたら優しく教えてくれた。ついでに迷った時の為に、紙切れに目的地を書いてくれた。鉄道はペルシャ語でローアハンというらしいことをこの時に始めて知った(アフガニスタンには鉄道がないので)。

 バスに乗ったら、正面に高い山が聳え立っていて、景色が少しカブールに似てるなぁと思った。この山々はアルボルズ山脈で、テヘランは山脈の麓に広がる都市なのだった。バスの車窓から眺めていると、何処までも家や建物が続いていて大都会だなぁって田舎から出てきた人みたいに驚いた。降りる場所がわからないのでずっと座っていたら終点のテヘラン駅に着いたので、500トマンだけ払ってバスを降りた。

 テヘラン駅にもやっぱりロッカーがあった。世界中、どこの駅にもロッカーはあるものなのだ。荷物を預けて身軽になったら、早速テヘランを見に行こうと思って、駅の案内係の女性に何処へ行ったらいいですかねと聞いてみた。困ったような顔をしているので、バスを降りてから目に入った大きなタワーを指差して「あそこに行きたい」と言ってみた。あそこまではけっこう遠いよ、とそのお姉さんが言うけど、テヘランには一体どんな観光名所があるのかもしらなかったので、そこへ行くと答えた。話している内に、僕はどうしてもあそこへ行かなければならないと、理由なんて何にもないのに思い込んでいた。そうしたら、恰幅のいいイラン人のおじさんが横から現れて、流暢な英語でこっちへ来いという。今からタクシーを止めて値段交渉してやるというのだ。そのおじさんはスウェーデンに住んだ事があるらしく、とても外国人慣れした人だった。空港で客街をしているタクシーの運転手と交渉の末、3000トマンでそこまで送ってくれることになった。

 見た感じ古いタクシーに乗って30分くらいすると、そのタワーに到着した。近くで見てみたらまだ建設中だった。
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↑目立つタワー。名前は知らない。

 せっかくタクシーで30分以上かけて来たのに建設中で中に入れず、高い所からテヘラン市内を見渡すという計画はあっけなく頓挫してしまった。しかもタイミングが悪い事に、折からの曇り空から雨が落ちて来た。少し悲しい気持ちになりながらも、屋根のある歩道橋へ駆け込んだ。なんか他に見るものはないのかなぁと思って地図を見てみたが、特に何も見当たらない。仕方なく、歩道橋の上からテヘランの悪名高き渋滞を撮影することにした。
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↑テヘランの渋滞

 テヘランは大きな街だが見るものはない、と旅で会ったイラン人はみんな言っていた。渋滞がひどいので時間までに駅まで戻ってこられるか心配だ、ともテヘラン駅の受付のお姉さんが言っていた。学生や社会人としてテヘランに住めば少しは違った印象だったのかもしれないが、通りすがりの旅人にとっては、テヘランは余り長くはいたくない場所だ。

 1時間もしない内にタクシーを拾って、そのタワーを後にした。疲れていたのか、帰りのタクシーの中では寝てしまい、気がついたらテヘラン駅に戻っていた。時間はまだ午後5時。まだ5時間以上もある。本を読んだり、音楽を聴いたりして時間を潰していたが、さすがに7時くらいには飽きてきて、駅の周りをぶらぶらして写真でも撮ろうと思い席を立った。

 テヘラン駅の前で写真を撮ろうとうろうろしていたら、突然、警察官に呼び止められた。質問をされたがよくわからず、観光客ですと言っている内にパスポートを取り上げられた。ちゃんとビザがあるでしょう、と見せようとしている時に、その警察官がパスポートを持ったまま空港の中に入っていこうとするので、何だかとても嫌な予感がして、パスポートを取り返してサッサと反対方向に歩き出した。警察官は追い駆けてこず、ただ何かをワーワーこっちに向かって叫んでいた。無視をして雑踏の中に消えた。

 一人で旅をしているのに、雨に打たれ、渋滞に巻き込まれて、挙句の果てに、警察官に難癖をつけらえたので、腹が立つのを抑えられず、イライラして歩いていると、今度は別のイラン人のおじさんに呼び止められた。今度は何の用事だと思って見上げると、まぁチャイでも飲んでけよ、という仕草でお店の中に招かれた。軽い気持ちで入ったら、そこは今回の旅行で一番イランらしい生活の空気を感じさせるカフェだった。
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↑カフェに誘ってくれたおじさん。僕のテヘランでの救世主。
 
 席に座ると定番の「クジョイー(ナニジンですか)?」からはじまり、これまた定番の「ハーナム・ダリ(奥さんはいるんですか)?」などの質問攻めにあった。とりあえずわかる単語を並べて意思疎通を図り、大体の自己紹介をした。少しはダリ語を喋れてよかった。たまにダリ語を喋っても理解してもらえないことがあって、例えば、ミネラルウォーターの大きいボトルが欲しい時に「アーベ・カローン(大きい水)」と言っても通じなかった。イランでは「大きい」を意味する「カローン」を「ボゾルグ」といい、小さいを意味する「ホルト」を「クチェーク」と言うのだった。他にも、「マクブーラス(美しい)」のことを「ズィーワー」とか「カシャンギー」と言うのだと旅で知り合ったイラン人から教えてもらった。カフェでは、煮込んだ豆とライスをお腹いっぱい食べ、周りの人と話しをしていた。お店の中の人はとにかく陽気で、外国人が珍しいのか冗談を言い合っては笑っていた。
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↑ザムザムを飲む兄ちゃん
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↑何故か壁に掛けてあった時計をはずして構えるカフェの兄ちゃん
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↑水煙草をふかすカフェのおやじ

 マルボロ・ライトを吸いながら、チャイを3、4杯飲んでいるととてもいい気持ちになって、お酒を飲んでもいないのに少し気分がハイになったような気がした。チャイには気分を高揚させる効果があるのかもしれない。カフェの中に、日本に住んでいたというおじさんが一人いて、意思の疎通ができるくらいの日本語で僕の話し相手になってくれた。千葉の市川に1年間くらい住んでいたんだというおじさんは、しきりに最新鋭の携帯電話に入っている動画をreal playerで再生して、「どうだこれはすごいだろ」とか「怖いでしょ」などといいながら、とてつもなく残酷な映像を僕に見せてきた。一体これはどういう趣味なんだろうかと思って、その場は苦笑いで相槌を打っていたが、後に、全く別のイラン人からも残酷な映像を見せられたので、案外、イラン人的感覚で面白い動画を携帯電話に保存して持ち歩いて友達と見せ合うのが流行りなのかもしれない。

 時間が経つのも忘れてカフェでチャイを楽しんでいたら、もう出発の1時間まえくらいになっていたので、お勘定を済ませてお店を出て、テヘラン駅へ向かった。帰りはイスファハンから直接マシュハドへ列車で移動するので、もうこのカフェに来る事はない。そう思うと切なくて、でも、僕はテヘランでこのカフェに来る事を定められていたのだという気がした。このお店に会えただけで、僕はテヘランに来てよかったと思う。
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↑ある時には疲れを癒し、ある時には気分を高揚させる、不思議な薬チャイ。
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by aokikenta | 2007-06-29 19:20 | 隣接国探索①奔流イラン編


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