2006年 11月 04日
思い込み
 思い返せば、昨年の今日11月4日にカブールへ向けて日本を発った。仕事でアフガニスタンに関わるようになってから1年が過ぎた計算になる。客観的な時間の長さというのは常に一定だと考えられているが、自分の中で流れる主観的な時間の長さというのは、楽しかった時と退屈している時とでは全然異なる。この1年間が早かったのか遅かったのか、自分でも整理が出来ていない。
 僕は思い込みが激しい人間で、イギリスで勉強している時に自分なりに考えた末に、どうしてもアフガニスタンで働きたいと思い込むようになった。周りの人からは「何でアフガニスタンなの?」という質問を沢山されたのだが、自分がアフガニスタンへ行く事は当然の帰結だと思っていた。
 大学院で西洋社会におけるイスラム教について講義をしている教授が、言った。

"It had to be started from somewhere(それはどこからか始められなければならなかった)."

「それ」が示すものは確か平和学だったと思う(あるいは違ったかもしれない)。平和学は西洋で生まれた学問だから切り口が西洋に偏っている、という批判が学生から出た時に先生は言った。それはどこからか始められなければならなかった。つまり最初の一歩がなければ、こうして平和について議論をしていることも、世界中から若者が集まって平和学を学ぶこともなかったのだ。だから、まず始めること。それから、問題点があれば修正していけばいい。最初の第一歩はとても重要なのだ。そんな風に僕は先生の言葉を解釈した(この言葉は僕の中でこのように消化されてしまったので、どういった文脈で述べられたのかという事実関係はもはやどうでもいい)。
 この言葉に習えば、ぼくの国際協力生活もどこからか始められなければならなかったということだ。まず始めること。それで自分に合わなかったり、次のステップが見えて来たならその時はそっちの方向へ進めばいい。最初の一歩が重要なのだ。その第一歩を踏み出させたのは、僕の場合思い込みだった。
 その思い込みのせいでアフガニスタンなんて危険な所に行く事になったわけだから、もし僕に何かあれば家族は僕の思い込みを恨めしく思うかもしれない。だけど、もし平和が人類の究極の理想だという立場にいてくれるのなら、それに取り組もうという人間が一人増えたことを喜ばしいことだと言って欲しい。そうすれば、僕の思い込みも少しは救われるというものだ。
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by aokikenta | 2006-11-04 22:39 | 日記(カブール)


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