2005年 07月 12日
2005年7月18日(月) 「8日目 駆け抜けて再びカイロ、そして胸に去来するもの」
 夜行列車での目覚め。生まれて初めての経験であった。6時30分ころに朝食を運ぶ駅員さんに起こされる。用意だけはしてもらったが、全然食欲がない。結局一口も食べず、また寝た。7時30分にカイロ駅到着。帰国のフライトもミラノ経由マンチェスター行きなのだが、カイロ発は翌日午前3時15分とものすごく早い。ホテルに泊まっても、ほとんど寝られないのだが、荷物を置くために、何より活動の拠点として安宿に泊まることにした。初日に泊まったIslamia House Hotelへ直行した。幸いにも部屋は空いており、トリプルルームを取ってもらった。

 荷物を置くと、待望のカイロ考古博物館へと向かった。旅の初めに、時間の都合で行けなかったので、楽しみにして行った。18エジプトポンド(約360円)払い、中へ入る。地図を見ると2階立てになっており、かなり時間がかかりそうだ。コースをざっくりと決めて、それぞれのペースで見ることにした。

 カイロ考古学博物館は凄い。展示してあるものの量がまずすごい。所狭しと学術的に貴重なものであろう物が展示されており、並べ切れなくて溢れかえっている。これは、展示できなかった物も相当あるに違いない。しかも、そのどれもが3000年やら4000年も前の物なのである。あまりに似たような物がありすぎて、当たり前のような感覚がしてくるが、展示物のどれをとっても、他の博物館でメインを張れるようなレベルのものであるのは間違いない。ミイラや棺桶などは、2階に行くとやたらめったら置いてあり、なんだか希少価値がなくなってくるが、実際は、本当に海外の博物館へ行ったらメインのアトラクションになるだろう。

 特に、2階にあるツタンカーメンの仮面と、その他の財宝は凄かった。絵で、発掘当時の様子を再現してあるのだが、あんな状態で発掘されたら、調査員は卒倒しただろう。ツタンカーメンの墓は、他の王家の墓とは異なり、3000年ほどの間、全く盗掘されずに綺麗に残っていたのである。これは、他の展示物を制してメインである理由がわかる。

 結局、4時間ほどかけてじっくりと見て回った。カイロ考古学博物館はエジプトに行ったならば絶対に行かなければならない場所である。

 午後2時くらいに外へ出て、韓国料理屋さんへ行く事にした。暑くて、あまり食欲がわかなかったが冷麺なら食べられそうな気がしたからである。ホテルに入っている「九龍」という名前のレストランへ入り、冷麺とビールを頼んだ。冷麺は辛めのものを注文した。冷たいスープをすすると、冷たさと辛さが脳を刺激し、爽快な気持ちにしてくれる。冷麺をほうばり、途中でビールを飲んで、また冷麺を食する。一気に食べた。おいしかった。日本に帰ったら、韓国へ旅行へ行こう。

 その後は、意見が分かれたので個人行動になった。僕は、ホテルへ戻り昼寝することにした。体調が回復したとはいえ、暑い中を歩き回るほどではなかった。

 夕方6時になると、HとMさんが部屋に来て、3人で、またハン・ハリーリへ行く事になった。タクシーを拾い、3日目にも行った場所へと再び行く事になった。ただ、今回の目的は、前回とは違いお土産を買う事である。午後8時に、これまた3日目に行ったレストランの前で集合、ということだけを決めて個人行動をすることにした。僕はもうすぐ留学を終えて日本に帰るので、あまり物を増やしたくなかった。欲しいものも特になかったので、目的もなくぶらぶらしていた。ただ、何も買わないのも寂しいので、Tシャツを一枚購入した。交渉の末、7ポンド(約140円)。続いて、イギリスにいる友達にあげるものを探して歩き回った。そして、パピルスでできた栞を買おうと決めた。皆、本を読むので実用的だし、パピルスというのがエジプトっぽくていい、と思った。しかし、これがなかなか上手く行かなかった。交渉しても目的の値段まで下がらない。そうなるとなんだか腹が立って、たいした値段でもないのに要らないと言ってしまう。ここまでそれなりに上手くいっていたので(ギザのらくだ屋を除く)、少し欲が出たのかもしれなかった。結局、値段に妥協できず、栞を買う事はできなかった。お土産を待っていた皆様、ごめんなさい。

 夕食は、前回も行った高級レストランで食べることにした。最後の夜は最後にふさわしく、エジプト料理で締めくくる。期待通り、味もサービスも満足だった。

 10時ごろお店を後にして、タクシーを拾った。ホテルに着いたら、荷物をまとめて空港に行くだけだ。そう思い、何気なく窓から外に目をやると、何故だかわからないが、見慣れていたと思っていた景色が、再びものすごく不思議なものに見え出した。パジャマのような服を着た男性、ナンを乗せた木の枠を頭の上に乗せながら器用に自転車を漕ぐ男、子供の手をつなぎながら道を渡ろうとするブルカを被った女性、水タバコを店の軒先で吸う男。そういった全てのものが、夜店に備え付けられたライトの柔らかい黄色で照らし出され、眼前に迫ってきた。その景色は、目に焼きついて離れず、鮮明な映像として僕の脳裏にこびりついた。
 
 ホテルに11時前に戻り、シャワーを浴び終わっても、空港に行くまでまだ小1時間あった。部屋では3人で何をするともなく、気が向いたら話しをし、ごろごろした。そうだ日記を書いておこうと思い、ノートを取り出した。

 カイロの喧騒に始まり、カイロ喧騒に包まれ終わる。夜の12時を過ぎても鳴り止まないクラクションを聞きながら、胸に去来するものを紙に書きつけようとするが、うまくいかない。満足、疲労、衝撃、そのどれもそうであり、どれも物足りない。ただ一つ言える事は、このタイミングでエジプトに来て本当に良かった、ということである。

"You are what you eat"(汝は汝の食する物のところである)

今回の旅で感じた事、驚いた事、見た事、聞いたこと、味わった事、笑った事、腹が立った事、匂いを嗅いだ事、そうした事の全てが自分の肉となり血となっていくはずだ。僕の現存在は、過去の経験によって構成されており、現在の経験は未来の自分の構成要素になっていく。知性はそれまでに食べた知的食物によって、感性は感的食物によって磨かれていく。旅は、自分の成長に直結し、自分の興味の及ぶ領域を押し広げてくれる。このタイミングで、この場所に、この仲間と来て良かった。開け放した窓から流れ込む心地よい風と、遠くに聞こえる車のホーンを耳の奥に感じながら、タハリール広場横イスラミア・ハウス・ホテルにて、僕のエジプト旅行は終わった。

※9日目は移動のみの為、省略します。
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by aokikenta | 2005-07-12 10:01 | (番外編)エジプト旅行記


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