2006年 04月 13日
カルザイ大統領の服装
e0016654_1303933.jpg カルザイ大統領の鮮やかな縦縞のコートと可愛らしい帽子を見て、お洒落な大統領だな、と思った人は多いかと思う。しかし、カルザイ大統領の服装には、新しい指導者としての「緻密な計算」が隠されている。それを理解する為に、カルザイ大統領の「名前」と彼がかぶる「帽子」の関係性について詳しく見てみる必要がある。
 まず、カルザイという名前について、カルザイという名前は「ザイ」の部分から、明白にパシュトゥーン人であることが見て取れる。パシュトゥーン人とはアフガニスタンで約40%ほどを占めるマジョリティーで、アフガニスタンの歴代指導者は、数人の指導者を除いて、全員がパシュトゥーン人である。アフガニスタンの公用語は、パシュトゥーン人が話すパシュトゥー語と、ペルシャ語の方言であるダリ語である。
 しかしながら、彼がかぶっている羊の毛でできた帽子、カラクル帽というのは中央アジア出身者がかぶる帽子である。
 ここで、何故パシュトゥーン人であるカルザイ大統領が、タジク人などの中央アジア出身者が通常かぶる帽子をかぶっているのか、という疑問が生じる。この疑問に対する原因を理解するには、帽子が持つ機能について理解しなくてはならない。帽子には大きく分けて2つの機能がある。
 1つは、気候の変化に対する機能である。寒冷地に住む人々がかぶるパコールと呼ばれる帽子は、寒さから頭部を守る為に用いられる。防寒の機能を果たしている。逆に、砂漠などの暑い地域の人々がかぶるターバンは、暑さと直射日光から頭部を守る機能を果たしている。ターバンには、パコールとは逆に帽熱の機能がある。
 さて、帽子には気候の変化に対する機能以外にもう1つの機能がある。その機能とは、ある集団への帰属を示す記号としての機能である。例えば、タリバン幹部はテレビに現れる時はいつも黒いターバンを頭に巻いている。これは、自分はタリバンに所属している、ということを視覚的に示す機能を持っている。
 カルザイ大統領の服装を見てみると、どこの出身なのかということは容易にはわかりづらい。帽子はタジク人の記号で、緑の縦縞のコート(チャパン)はウズベク人・トルクメン人の記号である。そして、カルザイの名前はパシュトゥーン人を示す。
 彼が意図的にこうした服装を選択するのは、異なる民族が住む国アフガニスタンにおいて重要なのは、お互いを憎しみ合うことではなく、手を取り合って共存していくことだ、という事を無言の内に示す為である。仮に、カルザイがターバンを巻いて公の舞台に現れたら、多くの人はどう思うだろうか。多くの人はタリバン時代を思い出し、統制が厳しかった時代を思い起こすに違いない。そして、またイスラム原理主義者が指導者になったか、と辟易とするだろう。
 カルザイは服装によって、アフガニスタンにとって重要なのは異なる民族が一体となって新しい平和な国づくりをすることだ、と示そうとしている。彼の服装はアフガニスタンの縮図であり、国家という観念がまだまだ浸透していないアフガニスタンにおいて国づくりの一つの指針となるものである。
 カルザイをアメリカ寄りだと批判する人は多い。
 しかし、カルザイは「見せる」のが上手なやり手の政治家であるという評価はできるだろう。


(参考文献)上述の情報は主に、渡辺光一『アフガニスタン 戦乱の現代史』(岩波書店、2003)に依った。

(写真出典)首相官邸ホームページ、http://www.kantei.go.jp/jp/koizumiphoto/2003/02/21afghan.html 
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by aokikenta | 2006-04-13 02:11 | 日記(カブール)


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