2006年 01月 10日
日本でかけられていた呪縛
 休みなので10時過ぎに起床。メールをチェックした後、久しぶりに体でも動かすかと思い立ち、部屋で簡単な運動をする。本当はジョギングや水泳など有酸素運動をしたいところだが、現状では不可能なのでやむなく筋力トレーニングになってしまう。最近、体の血の巡りが悪いような気がしていたので運動をして気持ちが良かった。

 シャワーを浴びて、大き目の昼ごはんをとる。そうすると、先輩がちょっとスタッフを連れて外に行かないかというので、why notとばかりに出かけた。いつもと同じシャーリナウで用事を済ませた。その他、読書・DVD鑑賞など体を休められた一日だった。

 僕は高校時代・大学時代、呪縛にかかっていた。その呪縛とは「無駄な時間を過ごしてはいけない」というものだった。何もしない一日があると、なんて非生産的な日だったんだと自己嫌悪の気持ちに囚われていた。休日でも遅くまで寝ると体に良くないと信じ、平日と同じ時間に起床していた。それ以外にも、ボーッとする時間があると、これはいかんということで何か「意味のあること」をしようと必死だった。

 社会人になってから、そういうやり方では体がもたないことを身をもって体験した。そしてスイッチオフの重要性を痛感した。日本では遅くまで寝ていることは良くないとか、勉強を必死にしなくてはならないという考え方が常識になっていると思う。留学時代も、「全然勉強してない。やばい。」という会話が友人の間でよく交わされていた。しかし、勉強しなくてはならない、という考え方も一種の呪縛であるように思う。僕は多くの日本人と同様、受験勉強もしたし、頭に詰め込む型の勉強もしてきた。

 しかし、そんな勉強はたいして意味がないことを留学時代によく感じていた。確かに難しい言葉を他の学生よりも知っているかもしれなかった。でも、議論にはほとんど参加できなかったし、考える力、議論する力が圧倒的に不足していることを感じた。例えば、人権について、確かに言葉は知っている。しかし、ゼミで議論をするとほとんど喋れない。身近な例を使って議論に参加することができない。借り物の知識しか持ち合わせていないことに気がついた。

 カブールに来てからもそうだった。事前に本を読んだり、インターネットを使ったりして沢山のことを知っているつもりになっていた。しかし、実際には戸惑う事の方が多い。アフガン人はもてなしの心が強いと言われる。それも事前に本で読んで知っていた。実際に来て見ると、お店の兄ちゃんが「お茶飲んでけよ」と1杯のチャイを勧めてくれる。言葉に甘えてチャイを飲みながら談笑する。疑いのない綺麗な目をみながら、素朴な心に感動したことが多々ある。

 若い頃の僕は日本という狭い空間の中であらゆる呪縛にかかっていたのだった。今は、朝10時に起きても罪悪感はない。何故なら、イギリスは朝の5時30分だし、日本は午後2時30分だ。明日イギリスに行くとしたら、アフガニスタンで使われている時間に囚われる事には何の意味もない。体を休める為の遅起きになんの罪もなく、やろうと決めた事が短くなった一日の中で処理できれば問題はない。

 勉強しなくてはならない、と自分に言い聞かす事に関しても疑問を感じ出した。前職でアメリカに出張で行った時に、「アメリカ人は仕事が途中でも退勤時間にはきっちりと帰ってしまう」と駐在員の方が言っていた。日本の考え方だったら、残業してでも仕事を終わらせるのかもしれない。しかし、家族と一緒に晩御飯を食べる事のほうが大事な人にたいして、その考え方は通用しないのだ。これは生きる上での豊かさという問題に関わってくる。仕事はあくまで生活していく為の手段であり、一番重要なのは家族である。そう考えると違う視点が持てる。勉強してディスティンクション(平均70点以上の優秀な学生に与えられる称号)で卒業する事が目標の学生はそうすればよいし、とにかく50点以上を取って卒業することが目標の人はそうすればよい。人それぞれの価値観があってよいと思う。

 こうして、朝早く起きなくてはならない、勉強しなくてはならない、仕事はきっちりと終えなくてはならない、という呪縛から解かれはじめ、相対的な見方ができるようになってから人生が楽しくなった。もちろん賛否両論あるかと思う。しかし、限られてはいるが僕なりの経験を積んでからそんな事を考えている。

 最後に、この文章は遅く起きる事の言い訳をする為に書いたものではない。早起きは三文の徳というのは本当だ。沢山やる事をして、「まだこんな時間か」と思い、一日の長さに嬉しくなるのは事実だ。また、全てに勤勉に取り組む日本人らしい姿勢も素晴らしいと思う。ただ、若い時はそれが「絶対」の尺度であった。そこから逸脱する自分がいると自分を憎んだ。そこに問題があったのだと思う。
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by aokikenta | 2006-01-10 00:42 | 日記(カブール)


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