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2005年 12月 19日
カブールで最も危険な日
 「ISAF」と大きく書かれた戦車が、最新鋭の武器を装備した屈強な兵隊たちを乗せて、いつも以上に幅をきかせてカブールの街を闊歩している。1973年来実に32年ぶりという国会がアフガニスタンで明日(2005年12月19日)開かれる。明日はナショナルホリデーになり、役所はお休み。我々の団体もオフにすることを決定した。明日の国会開会式には、各国から閣僚級の人がやってくる。新聞などで報道されていて最も目をひくのは、やはりアメリカからのゲスト、チェイニー副大統領だ。チェイニーは明日にアフガニスタン国会開会に立会い、木曜日には選挙の関連でイラクに訪れるという。うーん、何かが起こらないわけがないよなぁ。

 地方でアメリカ軍から掃討されようとしているタリバンは、最近かなり活動を活発化させている。16日には国会議事堂近くで自爆テロがあったし(タリバンは犯行声明を出している)、同日夜にはカンダハルで、警察官が3人殺されている。彼らが、この国会開会をターゲットにしてくることは火を見るよりも明らかだ。自爆テロを考えると、外国人が泊まるホテル、ISAF車両、国連車両などには近寄らない方がよいだろう。明日は外出は一切なしでおとなしくしていたいと思う。でも、うちの事務所にロケット弾が飛んで来たら避けられないだろうなぁ。ブラッドフォード仕込の「上げ受け(空手の防御の一種です)」でもお見舞いしてやろうか(確実に死ぬでしょう)。いや今日のところは「下段払い」で許してやろう(吉本新喜劇風)。

 和平合意後の民主化(democratization)については、紛争解決論のエッセーで書いたことがある。その時に僕は2つの主な課題を挙げた。1つは、文化の問題(culture question)。要するに、民主主義はイスラム教やアジアの伝統などと共存できるのか、というissue。もう1つは、和平合意後いつどのタイミングで最初の選挙を持ってくるのか、という問題。民主主義の国同士は戦争をしない傾向があるのだが、民主化段階の国というのは戦争に突入する傾向が強い、という論文をいくつか読んだ。民主主義とは何か、人権とは何かを一般市民の誰もがわかっていない段階、つまり市民社会が成熟していない状態で選挙を開催すると、候補者の間でジョッキーレースを生み、戦争に逆戻りしてしまう恐れがあるということだ。

 報道によれば、実際にアフガニスタンでは、選挙の最中には候補者暗殺や自爆テロなどが数多く起こった。そして、なんとかそれを乗り越えて、いよいよ国会開会だ。上の課題2つを兼ね備えているアフガニスタン。イスラム原理主義とアメリカの関係と言う不安定要素も加わり、そうとうcontroversialな船出であることに間違いはない。西洋で200年以上かけて育ててきたdemocracyはイスラム教と相容れるのか?和平合意後すぐに民主化して戦争に逆戻りする可能性はないのか?アメリカとイスラム原理主義者たちの間に和解はあるのか?どれもすぐには答えが出ない問題である。外部者である僕としては、アフガニスタンで平和を構築する為に、自分の知力と体力で出来得る限りの努力をしていきたいと思う。一方で、いわゆる国際社会には、明日の国会開会を転機にして、再びアフガニスタンを見捨てることのないようにして欲しいと切実に思う。援助の潮流はスーダンという話しを最近よく耳にするのだが、流行りのファッションじゃないんだから、そんな言い方はないだろう。まだまだアフガニスタンでの仕事が終わってないぜ。

by aokikenta | 2005-12-19 02:23 | 日記(カブール)


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